マスターズに別れを告げたB.クレンショー 亡き恩師との思い出
2015年7月6日（月）午後6:20
ジョージア州のオーガスタ・ナショナルGCを舞台に熱戦が続く第79回マスターズ。第3ラウンドを終えて、ジョーダン・スピースがトップを守るなか、ジャスティン・ローズ、フィル・ミケルソンら有力選手が追う展開となっている。
そんな激しい戦いの裏で、“ゴルフの祭典”に別れを告げた選手がいる。1984年と1995年の2度グリーンジャケットに袖を通したベン・クレンショーだ。40年連続で祭典に出場した63歳のベテランは、大会前に今回限りでのマスターズからの引退を表明。初日を「91」でラウンドすると、第2ラウンドは「85」。13番ではバーディを奪い、大きな歓声を浴びると、最終18番のグリーンを囲ったパトロンたちからは割れんばかりの拍手で迎えられた。
2度のマスターズ優勝の中で、特に記憶に残っているのは1995年大会だ。クレンショーは、この大会の直前までスランプに陥っていただけでなく、恩師であるハービー・ぺニック氏を亡くしていた。マスターズ初日の前日に葬儀へ参列した後、大好きなオーガスタ・ナショナルGCで調子を取り戻し、最終日はこみ上げる感情を抑えながら友人のデービス・ラブIIIを1打差で下した。
17番でバーディパットを沈めたクレンショー。18番のティーショットを打った後は「感情を抑えることができなかった」と振り返った。「キャディのカール（・ジャクソン）から『あと、2打か3打ですよ』と言われて我に返った」。ウイニングパットを沈めたクレンショーが、パターを手からこぼし、屈むようにしてむせび泣いたシーンはあまりにも有名だ。当時のインタビューでクレンショーは「様々な感情がこみあげた1週間だった。私のバッグには、ハービー・ぺニックという15本目の心強いクラブがあったけど、なぜ優勝できたのか分からない」と語っている。
（写真提供:Getty Images）
ぺニック氏から教わったことは？
「昔のことは、漠然としか覚えていない。兄弟でゴルフを始めた時、私は7歳、兄のチャーリーは8歳だった。ぺニックや私の父は、まずクラブの握り方を教えてくれた。特に難しいことを習っていた訳ではない。アーノルド・パーマーが父親から教わったように『正しいグリップを身につけたら、決して変えないように』と教わった」
ぺニック氏からの最後のレッスンは？
「彼が亡くなる数週間前、妻と一緒に会いに行った。ぺニックに『パットの調子が良くない』と伝えると、『フォワードプレスの動きを試しなさい』と言ってくれた。ハンドファーストを保つような動きだ。しかし、ビリー・キャスパーのようにヘッドが先行する動きで成功した選手は何人もいる。ストロークの方法はたくさんある」
その時、他にはどんな会話を？
「ぺニックの家を去る間際、彼の手にキスをして『愛しています」と伝えた。すると、『私もだ、ベン』と言ってれた」
クレンショーのマスターズ引退がそうであるように、時代は常に移り変わっていく。最終日には、21歳のスピースが新たな歴史の1ページを刻むのだろうか。
4月12日放送 LIVE FROM マスターズより
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