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欧州男子

小松直行の週刊オフチューブ ?ついにドバイに到達!今季最終戦「DPワールドツアーチャンピオンシップ ドバイ」?

2014年11月20日(木)午前11:15

LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、欧州ツアーの最新動向や見どころ等を、小松アナならではの視点でお届けします!

目次:

・ついにドバイに到達。今季最終戦、総額800万ドル、プラス15位までボーナス500万ドル!
・歴代勝者の肖像:「やつらを痛めつけてやれよ」と、ビリー・フォスターは言った

DP ワールドツアーチャレンジ ドバイ

今季ツアー最終戦!DP ワールドツアーチャンピオンシップ ドバイ


2014年11月21日木曜日朝6時20分、南アフリカ、ヨハネスブルク近郊グレンダワーGC、1番ホールのティー、ブランドン・ストーンのTSで始まった2014年シーズン。26か国/地域を巡って賞金加算対象試合は全49試合。いよいよ、最終目的地ドバイに到達しました。6年目の“レース・トゥー・ドバイ”、6回目の最終戦です。

舞台はドバイのジュメイラ・ゴルフエステート。市街から南西22km、空港から30分。
今年もグレッグ・ノーマン設計、2009年開場のアースコース(7,675/72)です。
もう一つのファイアーコースがありますが、今年は6年連続でアースコース開催となりました。ファイアーコースは来年以降使うことになった模様。

ノーマンは3500本の成熟した樹木と潅木数千本を植え、池、小川までを造ってパークランドコースを仕立て上げました。池は20、アラビア語でファラジという小川が2本。17番はアイランドグリーンです。砂漠なのに、大理石を砕いた砂を入れているバンカー以外は砂が見えません。ジュベル・アリ港で使い古されたペレットを砕いて、マルチとして敷き詰めて再利用しているということです。

あがりの4ホールは合計1マイル(1.6km)弱。の“ノーマン・マイル”とも呼ばれます。ノーマン曰く、「世界で最もチャレンジングでエキサイティングな1マイルだ」。

欧州ツアー今季最終戦!DPワールドツアーチャンピオンシップ ドバイ

【DP ワールドツアーチャンピオンシップ 放送日時】
全ラウンド衛星生中継!
1日目:11月20日(木)午後5:00?10:00
2日目:11月21日(金)午後5:00?10:00
3日目:11月22日(土)午後5:00?10:00
最終日:11月23日(日)午後4:30?9:30 (※最大延長 午後10:45)

 

賞金王はローリー・マキロイに確定しましたが、マキロイは日曜日の午後、この最終戦のトロフィーと、R2Dのトロフィーの両方を掲げたいと言っていました。かつてのマネジメントカンパニーとの訴訟沙汰でこの2週間は裁判所につめていたマキロイとしては、得意のコースでストレスを発散したいと思っているはずです。

最終的なR2Dの15位までに分配される総額500万ドルのボーナス争奪戦となります。1位125万ドル、2位80万、3位53万、・・・15位で10万ドルはプレイヤーたちの最後のがんばり次第。

先週のトルコ終了でのR2Dの1位から59位まで全員。60位のポール・ケイシーが欠場で、61位のマナッセロが入りました。ケイシー欠場の理由は、問い合わせましたが不明。単なる不出場、という回答がツアー側から返ってきましたが、お子さんも生まれてのんびりしたいということなのでしょうか。

ワールドランキング1位のマキロイから、4位のステンソン、6位のガルシア、7位のローズが出場という最強フィールドとなりましたので、最終成績によって与えられるワールドランキング・ポイントも大きくなります。年内にワールドランキングの60位以内に入れば、2014年の例では全米オープン出場資格が与えられることになります。さらに伝統的に、50位以内に入ればマスターズ、全英オープンへの招待状が届きます。

全英オープンの出場も決められます。これまで通りなら最終的な賞金ランキング(R2D)の30位までのプレイヤーは、全英オープン予選免除となります。

毎年、最後まで劇的なプレイが見られるのがこの最終戦。去年は先にアメリカのフェデックスカップを勝ち取ったヘンリク・ステンソンが、左手首の故障を押して戦い抜いて欧州賞金王も物にしました。随所で見られたステンソンのショットは「パワフルな上に絶妙」とでも言いましょうか、とくに二日目、626ヤードの14番ホール、2打目を3番アイアンを手にして287ヤードをグリーンに乗せたばかりか、1.5mに寄せたショットはすごかった。圧巻はもちろん、最終日。620ヤードの最終ホールで炸裂したあの2打目。グリーン手前を小川が流れる18番ホール、向かい風の248ヤードで3番ウッドを張り倒して、30cmに寄せてタップイン・イーグルで上がって見せたあのショット。追いかけたポールターに白いタオルを振らせた、あのショットは、去年の年間ベストショットに選ばれました。

2012年にマキロイに追いすがったジャスティン・ローズの最終日62はコースレコードになりました。ローズの最終ホール、2打目をグリーンの奥に乗せたところから、ホール際まで寄せた絶妙なパッティングは観客を唸らせました。そのあとで、マキロイが13番パー3をボギーにして揺らいだかに見えながら、14番からの上がり5ホールをすべてバーディーにしてあがって優勝。途方もない加速力で壁をやすやすと飛び越えるような、止まっていたものが、はじけるようにイキナリ遥かかなたまですっ飛んで行ってしまうような、そんなマキロイのゴルフでした。

ステンソン、ローズ、マキロイの3人がそれぞれのショットを再現して見せているビデオが、欧ツアー公式チャンネルにありますので、ご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=SVnXzOsFo5M&list=UUvZwbZt6YZQ4wj_7qyjPDZw

2011年は賞金王にルーク・ドナルド。しかし、この最終戦はアルバロ・キロスが勝ちました。ポール・ローリーと最終組でデッドヒートを展開したキロスは、1打差のリードで迎えた最終ホールでイーグルをものにして優勝。ローリーもバーディーにしますが、破格の飛距離にかなわなかった印象でした。

2010年の賞金王はマーティン・カイマー。最終戦はロバート・カールソンが逆転プレイオフ優勝。最終日を2打差リードで迎えていたイアン・ポールターに追いつき、プレイオフ2ホールめに決着。ポールターはバーディーパットに臨む際、マークしたコインに球を落としてコインを動かしてしまって1罰打。動揺もあってダボにしました。カールソンはいつものようにクールにバーディーを決めて決着、例の「ベリベリ、ハッピ」と言っていました。

生涯最高の自分 リー・ウェストウッド(英)

「コースへ出たらヤツらを痛めつけてやるんだ。本当の自分になるんだよ。
       あの90年代の終わりと2000年のキミの強さを、取り戻すんだよ」
            ---(ビリー・フォスター;L・ウエストウッドのキャディー)

 2008年11月6日、上海シャーシャン国際GC、午前9時25分。スターター、アイヴァー・ロブソンのあの独特のコールで、ロバート・カールソンがティーショットを放って始まった382日間の長いシーズンが、ヨーロッパのみならずアジア、アフリカ、オーストラリアを含め、27の国と地域を回って、2009年11月19日、中東ドバイでの最終戦を迎えた。

「レース・トゥー・ドバイ」は、38年目の欧州ツアーが鳴り物入りで始めた賞金王争いで、最終ランキングの上位15名には総額750万ドルのボーナスが配分される。その決定戦が、欧ツアーにとって国際的な本拠地と目論んでいるアラブ首長国連邦のドバイ。

約300名ほどのツアーメンバーのなかで、ここにたどり着くことができたのは、積み上げて来た獲得賞金額ランキングの上位60名で、今季優勝者22名を含め、コンスタントに成績を出して来た実力者ばかりのフィールドである。メジャーチャンピオンは4名、過去の賞金王が5名、優勝経験者49名の欧州での合計勝利数は218勝になる。

このなかでしのぎを削りながら頂点を極めるのは並大抵のことではない。もちろん相応の、総額750万ドルという欧ツアー史上最高の賞金額がかけられ、優勝なら125万ドルをものにできる。優勝で賞金王になるなら、その勝者はさらに150万ドルのボーナスを獲得することになる。

この最終戦の賞金配分から、賞金王の可能性は上位4名にしぼられていた。それぞれが今季終盤のここまでの数週間、好調を見せつけあうようなデッドヒートを繰り広げて来ていた。ロス・フィッシャーは3週間前の世界マッチプレイで、今年のマスターズ・チャンピオン、アンヘル・カブレラを下して勝っていた。

マーティン・カイマーは夏の2週連続優勝のあとケガで戦線離脱していたが、復帰戦でいきなり優勝争いを演じ、気力も充実して臨んでいた。しかし、賞金王の行方は初日、二日目の展開から、ランキング1位と2位のふたりによる争いの様相になっていった。

タ1月に初優勝をものにした最年少、20歳のローリー・マキロイは、驚異的な実力と勢いを見せつけるシーズンを過ごして来た。トップテンに13回、5位以内が10回、ここまで24戦で半分は優勝争いをしていたのである。直前の香港オープンでも週末を65-64で回って2打差の2位に食い込み、賞金ランキング1位に返り咲いて最終戦を迎えていた。

一方、10月のポルトガル・マスターズ優勝から4週間、ランキングのトップにいたリー・ウエストウッドは、マキロイに12万8,172ユーロ差をつけられており、どちらが何位ならどうなるといった下馬評も交わされたが、さて試合が始まってみると、この金額はあまり意味をなさないように思われた。この試合に勝つのはふたりのうちどちらなのか、という様相だったからだ。
リー・ウエストウッドとローリー・マキロイ

初日は、最終戦のならいによって賞金ランキング順のドローになる。マキロイとウエストウッドが最終組を回り、出だしから一騎打ちの優勝争いという緊迫したムードだった。ひとつ前の組ではカイマーが71、フィッシャーが73。ふたりはそのまま最終日まで60台のスコアを出せずに終わっていった。

初日のウエストウッドは中盤に4連続バーディー、さらに15番から3連続バーディーで、1ボギーの66。マキロイは13番からの3連続バーディーを含む5バーディー1ボギーで68。

ふたりとも、この試合に優勝することに集中すると公言していたが、一緒に回って2打差をつけられたマキロイは、初日の記者会見でウエストウッドと回るのは有利だと思うか、という質問に対して、少し逃げ腰とも受け取られかねない答え方をした。

「いいえ、そうは思いません。むしろ僕は・・、とくに明日は、彼と一緒の組ではないので、われわれ二人にとって一緒に回らない方がいいと僕は思います。だって、われわれが戦っているのはこの試合、ドバイ・ワールド・チャンピオンシップなんですから。いいプレイができれば、賞金王を勝ち取れるわけで、だから、ふたりともにドバイ・ワールド・チャンピオンシップに勝つことだけを目指していれば、結果は自ずと出る、なるようになると思う」

ハードボイルド・ウエストウッド

「その時点で、私にしてみれば、してやったり、というところでした。ローリーが逃げ出せてよかったと言っているのを聞いたときにね。一番、言ってはならないことを、ローリーは言った。もし彼が教訓にできるとすれば、このことですね。私にしてみれば、戦う相手が私と回らないことを喜んでいると発言すること以上に、望ましいことはない。

今週はいろいろありました。コースに着いた日から、フェアウエイを歩きながら、まるで機械のようだねと言われた。私はフェアウエイをまったく外さないからです。そういう些細なことでも、私は自分を力づける材料にしていった。 できるだけ自分をあおるように努力して、ネガティヴなことは取り合わないようにした」

戦う相手はコースだという言い方は便宜でしかない。コースに勝って、誰かに負ける、という結果は聞こえのいい言い訳でしかありえないのが、勝負の世界だ。ウエストウッドは「対戦者(competitor)」と言った。力のあるもの同士が賞金王争いをする段になれば、相手にまさる気概が無ければ勝てまい。 マキロイの初日の発言を、ウエストウッドは翌朝の新聞記事で見たというが、二日目に臨む気構えを、ますます強めさせる結果となった。

「驚いたとはいわないが、私はツアーに16年、ローリーは3年。それはこれからのなかで、彼が学ぶことになるものでしょう。プレイが終わってからの発言やマインドゲーム(心理戦)は、ときとして、自分のプレイで相手に与えることのできるプレッシャーと同じくらい重要なのです」

二日目はともに69で、ウエストウッドが首位に立った。マキロイは、2打差で入った三日目、15番までに6つのバーディーを決めてついに首位に並んだ。しかし、上がりを3連続ボギーにして69。一方、ウエストウッドはノーボギーの66で単独首位を守り、マキロイとの差は5打に開いた。

最終日、マキロイは7番ホールで、なんと広告板にウエッジを突き刺した。後ろから来るウエストウッドがスタートから次々にバーディーをものにしているというのに、自分は伸ばせず、ついにイライラが爆発した様子だった。

8番までパーを重ねたマキロイは、そこから崩れてしまうのかと思わせたが、9番からは3連続バーディーをものにし、13番、14番、17番ととって9ホールで6つのバーディーを取って上がった。

ウエストウッドは出だしから圧倒的だった。2番、3番と取り、5番から3連続。7ホールで5つのバーディーをものにした。10番で6つめが来たとき、2打差からウエストウッドと一緒に回ったロス・マッガワンとの差はすでに7打になっていた。マッガワンは12番から5連続バーディーをものにして食らいつく姿勢を崩さなかったが、ウエストウッドはさらに2つ伸ばした。ウエストウッドのワンマンショーに華をそえつつも、力尽きたマッガワンは連続ボギーでフィニッシュし2位に入った。

マキロイは結局、8打差の単独3位に終わったが、同じマネジメント会社(ISM)所属の後輩でもあるマキロイを、ウエストウッドはかなり評価している。2010年はライダーカップのティームメイトにもなるであろう、16歳年下のマキロイに対して、いわば親身のような、率直で厳しい目を向けているのがうかがえる。

「初日に一緒に回って、正直なヤツだと思った。調子が最高だとは言えない様子だったけれど、それでも68でまとめられるのは、彼が優れたプレイヤーである証拠。私は彼にプレッシャーをかけ続けていましたしね。私の方は10の8、10の9といった調子のゴルフをしていましたが、彼は踏ん張って、食らいついていました」

「だいたいヤツは20歳ですよ。これからどのくらい稼ぐんですか。すでに億万長者で、すごい飛距離も出るし、かわいいガールフレンドもいる。乗っているのはランボルギーニと来た。たいへんなことでしょう、これは・・・(笑)」

ウエストウッドのいうマキロイの敗因は、賞金ランキングトップにいた彼が、追いかけてくる者を気にして肩越しに見てしまったことだろうか。目の前の試合に集中すると言いながら、たとえ無意識であっても、逃げ切りを考えていたということだろうか。

私はゴルフチャンネルの欧州ツアー中継開始とともにチャンピオンとしてのウエストウッドを見てきた。1996年の初優勝から2000年に最初の賞金王に輝くまでに世界中で勝ちまくった24勝。つづくスランプと復活。そしてライダーカップ。キャリアには波もトンネルもあり、ゴルフにはゾーンも噛み合わないタイミングもある。運、不運は言うまでもない。ウエストウッドのこの14年間は、まさにその繰り返しの中で、ひとりのプロが自分の技量を高めてきた典型になるだろうと思う。

この試合のウエストウッドはいつも通りクールで感情をあまり表さず、豪快なティーショットをフェアウエイに放ち、ピンに絡むアプローチを繰り返し、凌ぐパーパットを入れて、揺るぎないゴルフを続けた。この2年間、46試合でトップテンに24回入るゴルフをし、2008年の全米オープン、2009年の全英オープンで、決めなければならない1打を落として泣いたウエストウッドが、自分の脆弱な部分を内側から固めていってついに完璧な自分を手に入れた瞬間だったのだろうと思う。

その瞬間が長続きはしないことも、ウエストウッドはよくわかっている。自分はつねに向上すると思うのは幻想に過ぎず、自分というのは変わり易いものと思い知っている。ゴルフはいつでもゴルフだが、心理同様、自分の技術も気まぐれで、パッティングはそのとき入っていればそれでいいのであって、技術的にさらに磨こうとするあまりにバランスを失って壊滅するというような事態が起こる。スウィングも同じだ。スランプのどん底で味わう最悪の気分も知っているウエストウッドにとって、怖れることは何もない。

リーダーボードを見ない


他者のことは構っていられない。それほど、この試合はタフで、自分の能力を出し切らないといけないんだと、初日からウエストウッドは言っていた。これまで、回りを気にしていて負けたことは何度もあり、そのたびに、頭を抱えて反省したのだとも語った。

この試合で、ウエストウッドはリーダーボードを見ないでプレイし続けることを、キャディーのビリー・フォスターから進言され、実践していた。二日目に首位に立った時の記者会見で、首を傾げる記者たちに次のように説明していた。

---リーダーボードを見るというポリシーを変えたんですか、それとも気分で?

「 いつもはリーダーボード・ウォッチャーですが、今週はビリーが禁止したという感じなんです。だから、じつは不得要領なんですよ」

---ポルトガル・マスターズで勝った時は見ていましたよね?

「ええ、見てました。でも今週は何が違ったことをしようとふたりで決めたのです。だから、見ていません」

---では、優勝がかかっている時に、忘れてはいけない最も重要なことって何?

「いいですか、今週ここへ来た時から、私にできるいいプレイをし、いくつかパットを入れて、グリーンを外したときには寄せワンを決められるなら、私は勝てると思っています。それだけの力はあると自覚しているのです。だから、ただプレイに集中して、他の誰かが何をしているかということを気にしないようにしなければならない。それが、私にできることのすべてだから。コントロールできるものをコントロールする、それは私自身のことだけだからです」

---リーダーボードを見ないとなると、のこり2ラウンドをある目標となる数字を胸にプレイすることになるんですか?

いえ、ターゲットなし。ただ、いまやっているプレイを続けることです。どんなショットも無駄にしないで、バーディーをできるだけとり続けて、私にできるだけの、満足できるいいショットを打ち続けていくことです」

---予想優勝スコアをたずねられたら、いくつになると答えますか?

「願わくは私のスコアです。わかりませんね、まったく。」

---すでに間接的に答えていると思いますが、のこり2ラウンドという時点で、2打差の単独首位というポジションは願っていた通り?

「そうですね、いや、10打差くらいがよかったのにね。2打差はもちろん素晴らしい位置です。リーダボードのトップを見たときには、その下に実力者がどのくらい控えているのか、強いプレイヤーはどのくらいいるのか、そんな中でリードを維持して優勝するのはどれくらい難しいことなのかを、わかってくださいね」

相手を叩きのめす

ウエストウッドは、リーダボードを見ずに相手を叩きのめした。それは意図した通りのことだった。リーダーボードを見ないのは、見なくてもわかるからなのか。そのままでは矛盾するような戦い方だが、一言で言えばそれは「自信」だろう。

この週の火曜日に催されたビーチ・パーティーで、キャディーのビリー・フォスターがハイネケンに酔いながらも本心で言ったことに、ウエストウッドは得心したという。

「キミは30勝してる。年間7勝したこともあるし、キャリアで30勝というのは、賞金王を狙ってるほかの3人の合計よりも多いだろう。ツアーで16年というのも、ほかの3人を合わせたより長い」

君らしいプレイをしてくれれば、リーダーボードを見上げて心配するのは彼らの方だ。それをこの試合でやろうじゃないかと、フォスターはウエストウッドを焚き付けた。

「コースへ出たらヤツらを痛めつけてやるんだ。本当の自分になるんだよ。あの90年代の終わりと2000年のキミの、本来の強さを取り戻すんだ」

「痛めつける( bully )」とはひどい言葉なので、自分としては大嫌いな言い方だが( I hate it )と前置きしてから、ウエストウッドは、今週何度か記者たちに聞かれながら答えなかったこと、キャディーのフォスターに言われたことを、初めて明かしたのだった。

今年は素晴らしい一年で、ポルトガルで勝って大いに自信もついたが、そこからは本来の自分ではなくなった。回りの人たちを気にしすぎていた。誰かがどんなスコアを出してくるか気になって、リーダーボードを何度も見すぎていたと語った。

かといって、ウエストウッドは自分の力にみじんも不安を感じていなかったのだから、この試合でリーダーボードを見ないと決めたのは、見て自信を深めることが災いすることもあるから、ということだったのかもしれない。

90年代終わりにウエストウッドが勝ちまくっている時、ニック・ファルドはウエストウッドの「勝ち抜ける」能力を称えた。欧ツアー20勝のうちの11勝は最終日を首位で迎えたままの勝利だし、10月のポルトガル・マスターズで見せた最終日の出だし4連続バーディーのように、逆転先制パンチで上に出るや、誰にも追い抜かせないような盤石の勝ち方を見せつけて来た。

リーダーボードを見ないというのは、戦法というよりも、そうした自分の力をそのままにプレイすれば、結果は明らかだという自信、勝負の昇り詰め方、フィニッシュラインの越え方をすでに知り尽くしていることへの自信だけを、拠り所にしたかったということかもしれない。つまりは、 経験こそ自信にほかならない、ということだろう。

「自分の在りよう、自分がどんなふうに自分自身を演じるかということが、他のプレイヤーにとって脅威になりうるんだと思う。いえ、私が脅威的だったと言ってるわけではありませんが、それは確かに作用していたと思います。気分的に楽でしたからね。二日目に、思惑通りいかなくて、取るべきバーディーが取れなかった時でも、私は辛抱しようとしていたし、それまでと同じ穏やかさを保って、事態が好転するのを待とうとしていました」

欧州の上位プレイヤーが勢揃いしたフィールドでの、賞金王のかかるシーズン最終戦。メジャーにも匹敵する、これ以上、プレッシャーのかかりようのない試合で、ボギーは二日目の8番で2つ目を喫して以降、46ホールでひとつもなかったばかりか、週末の二日間に14のバーディーを決め、66-64で回った。トーレーパインズや、勝てるはずだったターンベリーから学んだことをやってのけたのだ。最終日の64はコースレコード、6打差はシーズン最大差優勝である。そして、世界ランキングは、2001年始めに記録した自己ベストの4位に、再び上り詰めた。
リー・ウェストウッドとキャディのビリー・フォスター

自分を取り戻したウエストウッドが、こういう勝ち方をしたということは、近年になかった喜ばしい出来事ではなかろうか。賞金王とスランプ、ターンベリーとドバイ。デビューからおそれを知らぬ勢いで上り詰めた2000年の賞金王と、そこからのスランプ。首位に立っていながら最後の数ホールで負けた全英オープンと、揺るぎなきドバイでの勝利。自信、とは、経験とほぼ同義であるといえるなら、これでまた安心してプロゴルフを楽しめる気がする。

(資料)ドバイ・ワールド選手権、公式記者会見スクリプト

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